向田邦子 阿修羅のごとく
昭和の香り漂う物語でした。
題名の由来は、物語の中盤に出てきます。
「阿修羅はインドの神様で、仁義礼智信を
標榜しながら、実は気が強く、人の悪口を
言うのが好きな怒りと争いのシンボル、言わば
戦いの神である。女はその阿修羅で男は勝ち目
がない」と次女の夫が、前を歩く4姉妹の後ろ姿
を眺めながら、しみじみ言うのです。
年老いた両親と4姉妹の繰り広げる愛憎劇にすぐに
引き込まれ、最後まで夢中になりました。
4人は45歳の長女から25歳の末っ子まで、随分年の
離れた姉妹です。夫の裏切りに耐え忍んできた母親も、
娘達にどんなに救われたことでしょう。
もっと不満をぶつければ良いのに、ある意味
この時代の女性たちは皆、夫に対して控えめです。
その分、内に秘めた阿修羅は凄まじく・・・
それに対して、姉妹喧嘩の実にストレートなこと。
葛藤や仲違いが有っても、心の奥底ではお互いを
頼りにして大切に思う心が、なんとも温かい。
人間生きていると思いもよらぬことが起こり続け、人生は
なかなか思い通りにいかないけれど、時には不幸が幸せを
運んでくることもあり、縁は異なもの味なものです。
それから、身勝手で理不尽でしかない相手の行いにも、
その人なりの思いや事情があるもんだ、などなど、
様々な場面で感慨に耽った作品でした。
4姉妹っていいなあ・・・・