2020年5月9日土曜日

本のお話324 阿修羅のごとく

向田邦子 阿修羅のごとく

昭和の香り漂う物語でした。

題名の由来は、物語の中盤に出てきます。
「阿修羅はインドの神様で、仁義礼智信を
標榜しながら、実は気が強く、人の悪口を
言うのが好きな怒りと争いのシンボル、言わば
戦いの神である。女はその阿修羅で男は勝ち目
がない」と次女の夫が、前を歩く4姉妹の後ろ姿
を眺めながら、しみじみ言うのです。

年老いた両親と4姉妹の繰り広げる愛憎劇にすぐに
引き込まれ、最後まで夢中になりました。
4人は45歳の長女から25歳の末っ子まで、随分年の
離れた姉妹です。夫の裏切りに耐え忍んできた母親も、
娘達にどんなに救われたことでしょう。

もっと不満をぶつければ良いのに、ある意味
この時代の女性たちは皆、夫に対して控えめです。
その分、内に秘めた阿修羅は凄まじく・・・

それに対して、姉妹喧嘩の実にストレートなこと。
葛藤や仲違いが有っても、心の奥底ではお互いを
頼りにして大切に思う心が、なんとも温かい。

人間生きていると思いもよらぬことが起こり続け、人生は
なかなか思い通りにいかないけれど、時には不幸が幸せを
運んでくることもあり、縁は異なもの味なものです。

それから、身勝手で理不尽でしかない相手の行いにも、
その人なりの思いや事情があるもんだ、などなど、
様々な場面で感慨に耽った作品でした。

4姉妹っていいなあ・・・・