2021年2月9日火曜日

本のお話338 ユートピア

 湊かなえ第16弾 ユートピア

最近読む本は、湊かなえ、三浦しをん、
宮部みゆきの3者作で占められている
気がする。
どうしてそうなるのか分からないけど、
きっとお買い得コーナーで見つけたら
即買ってしまうのが、このお三方なん
だろうなあ。

これもミステリーで、最後の最後に
あっと驚くどんでん返しが待っていました。

この物語にも、随所に作者の出身地である瀬戸内海の
とある島への思いが投影されていて、作者作品の
「望郷」を彷彿とさせます。

真っ青な海と美しい夕日、都会では感じられない季節の
移り変わりを全身で感じられる豊かな自然と共にある暮らし。
それと相反して、狭い世界で暮らす噂好きな島民の閉鎖的で
陰湿な島社会への嫌悪がこの物語にもよく表れていました。
島から飛び出したくてしょうがなかった作者の思いが、
主人公の1人である菜々子に込められている気がします。

毎度作者に感心させられるのは、人の気持ちの微細な表現と、
一つの事象を複数目線、別角度で語れるところです。

読者を人間不信に陥らせるまでに人の心の裏を読み、
ドロドロ心理を炙り出せるのは、作者が極めてセンシティブ
な人だからに違いなく、それでは、辛かったりしませんか?
と、思わず問いたくなったりもして。

そんな才能を持ちつつも、もし彼女が案外図太くて、
鈍感力をも兼ね備えた人だったら、それこそ超人。
益々尊敬致します。そうであって欲しい。