2022年7月8日金曜日

本のお話351 悲嘆の門

 宮部みゆき第17弾 悲嘆の門

悪意や怪しげな情報に溢れるネット
社会を監視するサイバーパトロール
会社を中心に連続殺人事件を描いた
物語です。

現実的な物語と信じて疑わず、
サイバーパトロールという未知の世界への関心も
手伝って面白さが加速していく中で、突然思いも
よらぬ方向に舵が切られ、まさかの展開に!!
それはまるで乗っていた電車が地上を離れて、上空に
登っていくかのような感覚でした。

物語を紡ぎ出す大車輪やそれを回す無名僧たち、領域、
言葉の残滓、言霊、門番、狼、ん?これは「英雄の書」???
そして極めつけは、英雄の書のヒロイン、ユーリの登場です。
英雄の書の続編だったなんて。

続編と言っても、今回の主人公はサイバーパトロール会社で
アルバイトする正義感の強い男子大学生で、前作とは別の物語
となっていて、英雄の書の主人公は、脇役としてちょこっと
登場するにとどまります。

終盤で物語の向かう先に不安を覚えつつ、延々と続くかの様な
気配を漂わせながら展開する場面を乗り切るのに少々忍耐が
要りましたが、最後は張り巡らせた伏線がきちんと回収され、
納得のいくラストでした。

総じて読者を満足させてくれる作品に仕上がっているのでは
ないでしょうか←なんて、偉そうに((´∀`*))

世俗的なミステリーと冒険ファンタジーというレアな組合わせは
作者ならではで、その独特の宮部ワールドに老若男女問わず
魅了されるんだよね。