作者らしくない雰囲気のお話でした。
辛く切ない物語でありながら、
大きな安心と満足が得られたのは、
謎をきちんと解明して終わらせて
くれたからです。
ここからネタバレ、ご用心。
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誰にとっても、大切な人の失踪以上の苦しみがこの世に有るはずが
なく、「柔らかな頬」や作者作の「星宿海への道」の様に、
そこをうやむやにしたままでは、やりきれない思いが残ってしまいます。
その意味では、この上なく素晴らしい結末でしたが、
そうせざるを得なかった事情に対して取るべき手段がもっと他に
有ったのではないかと思ったりも・・・
人格者として描かれてきた人物の意外過ぎる裏の顔に驚愕した
作品でもあります。
以前作者がエッセイの中で、作家仲間が印税で家を建てたことに触れ、
「自分ならそのお金で旅に出て、色んな景色を見て回るだろう。
そうすれば、そこからまた新たな物語を作るヒントが得られるのに、
もったいない限りだ」と述べておられました。
入った大金で家を建てるのは、当然の遣い道と思われますが、
この作品を読んで、作者の考えに納得致しました。
作者は、南カリフォルニアの地に佇み、半島に広がる超高級住宅街や
キラキラ輝く海を眺めたからこそ、この物語を生み出すことが
できたのだから。
そう言えば、
車窓からの風景を見ていると無限に物語が浮かび、広がっていくと、
在りし日の松本清張氏も対談番組で語ってたなあ・・・
それはひとえに才能の成せる技!!