2017年4月4日火曜日

本のお話263 異邦人の夜

梁川石日第8弾 異邦人の夜(上下巻)

自伝小説が得意な作者ですが、フィクション

もなかなかのもので、スリルと実話のような
リアリティで、読者を最後まで引きつけて
離しません。

これは、前作「断層海流」の続編です。

訳有って祖国を逃れやってきた日本で、巨万の富
築きながら、過去の呪縛に悩まされ続ける在日
韓国人男性の木村と、ダンサーを見て騙され、
日本に連れて来られたフィリピン女性マリア
その後が、描かれています。

また、
世間知らずで気ままな木村の一人娘貴子の絶望と、
先輩の同志や支援団体との出会いよって、その深き淵
から這い上がり成長する彼女の姿も、必見です。

この作品は、作者がこれまで描いてきたテーマの他に、

豊かな社会の裏側で苦しむマリアの様な娘たちの境遇にも
焦点が当てられています。

ここから、ちょびっとネタバレですが・・・

2人の主人公共に、意外な結末を迎えますが、特に
マリアの場合、釈然としない思いが残ります。
もっと他の終わり方は、なかったのかなあ・・・と。