梁川石日第8弾 異邦人の夜(上下巻)
自伝小説が得意な作者ですが、フィクション
もなかなかのもので、スリルと実話のような
リアリティで、読者を最後まで引きつけて
離しません。
これは、前作「断層海流」の続編です。
訳有って祖国を逃れやってきた日本で、巨万の富
を築きながら、過去の呪縛に悩まされ続ける在日
韓国人男性の木村と、ダンサーを夢見て騙され、
日本に連れて来られたフィリピン人女性マリアの
その後が、描かれています。
また、世間知らずで気ままな木村の一人娘貴子の絶望と、
先輩の同志や支援団体との出会いによって、その深き淵
から這い上がり成長する彼女の姿も、必見です。
この作品は、作者がこれまで描いてきたテーマの他に、
豊かな社会の裏側で苦しむマリアの様な娘たちの境遇にも
焦点が当てられています。
ここから、ちょびっとネタバレですが・・・
2人の主人公共に、意外な結末を迎えますが、特に
マリアの場合、釈然としない思いが残ります。
もっと他の終わり方は、なかったのかなあ・・・と。