2020年6月19日金曜日

本のお話326 アンチェルの蝶

遠田潤子第2弾 アンチェルの蝶

アンチェルの蝶~このタイトルには、
深い意味が込められていました。

前作「雪の鉄樹」に感動して、いつか制覇
したいと思った遠田作品。
家のストック本を読み終えたのを機に作者の
代表作を幾つか注文しました。

それぞれが不幸な家庭環境に悩む中学時代の
親友3人の謎に満ちた波乱万丈の物語です。

雪の鉄樹の主人公が育ったのは、極めて特異な家庭でしたが、
この物語に登場する親どものクズっぷりと言ったら、
その比じゃないね。あまりの仕打ちに言葉を失います。

もし彼らの親が、もうちょっとだけマシな人間だったら、
多少の困難など易々と乗り越え、夢に向かって突き進んで
いく逞しさと能力を兼ね備えた前途ある少年と少女だった
のに・・・

彼女の作風でしょうか、ストーリーは全く違いますが、
前作に通じるものを大いに感じます。
主人公が幼少期からの過酷な環境にも関わらず、無骨だけど
誠実で他者を思いやる優しさに溢れていることや、トラウマから
くる心の病に苦しみながら、次次と襲いかかる困難と闘うこと、
そして、謎が徐々に解き明かされていく手法についても。

しかし!
苦しみの先に光の見えた前作と違い、重苦しさの向こうで
待ち構えていたのは、ただただ納得のいかない結末でした。
最後まで強く引き付けられた割に、もやもやした後味の悪さ
が残ります。

私は、声を大にして言いたい!
こんなの受け入れられないよ~