湊かなえ第11弾 サファイア
7つの宝石をモチーフに繰り広げられる
ミステリー要素を持つ短編集です。
これらの中でサファイアとガーネットだけが
繋がったお話で、2部構成となっています。
表題だけあって、目玉作でした。
「この人は、あの人だったんだ~」という人物
の意外性や、人の心の奥底に潜む悪意や怖さ、
時に、表面的な優しさの裏に隠された底意地の悪さという、
湊作品の特徴が、これらの短編にもよく表れています。
読者は、あまりのどろどろ心理に嫌悪感を覚えつつも、物語に
引き込まれる訳ですが、そんな小説ばかり描く女性作家が、
「ガーネット」にも登場します。
作者は彼女に、自身を投影させているのかな。
さしずめ、真珠はギャグ風残酷物語、ルビーは娯楽作品、ダイアモンドは
現代版お伽話、猫目石はゴシップ、ムーンストーンとサファイア&ガーネット
は、「望郷」の雲の糸や光の航路の様に、読者を一時憂鬱な気分に陥れながらも、
重苦しさの向こうには一筋の光が差し込む、読後感爽やか物語といったところ
でしょうか。