桐野夏生 グロテスク
数年前に友達が貸してくれた作者作品の
「魂萌え」が面白かった事と、タイトル
に興味をそそられた事&古本屋で安く売
られていた事から、これを選んだ訳です
が・・・
電車に乗るのが楽しみになる位引き込まれ
ますが、「魂萌え」とは随分雰囲気の違う
異様な作品でした。
かつて世間を騒がせたある事件が頭をよぎりましたが、
巻末解説で、やっぱりその事件を基にしていると判明。
う~ん、ここまで被害者をネタにして良いものか、
疑問が残ります。
主人公の心理のドロドロ具合は、まさに湊かなえさんバリ。
いやそれ以上かも。
マウンティング、劣等感と疎外感、嫉妬、肉親や友人、社会
への恨みつらみや復讐心など、負の感情ばかりが、どす黒く
渦巻いているお話で、孤独や寂しさが生む心の闇がテーマの
作品と言えそうです。
主人公は訳知り顔で、殊更に自身の観念を世の中全体の考えであるかの
様に説き続けていますが、全く違うとは言えないまでも、そこまでじゃ
ないよ、と言いたくなるほど、考えが、何かにつけ極端です。
もしや、作者の辛い経験が土台になっているのでは?と思う位、
登場人物それぞれの感情が、微細に表現されていました。
感想を一言で言い表すなら、人間って、哀しくも恐ろしい、
いや、恐ろしくも哀しい・・・でしょうか。