2019年8月9日金曜日

本のお話303 花のれん

山崎豊子第10弾 花のれん

作者の初期作品は、自身も生まれ育った
船場の商家を描いたものが殆どの様です。
これもそのうちの一つと思って読み進める
と、幾つものシーンが、数年前の朝ドラ
「わろてんか」と重なるではありませんか!

それもその筈、これこそが、わろてんかの
原作で、吉本興業を築いた女興行師の半生
を描いたものだったのです。
けれども小説は、ドラマと一味違います。

特にかけ離れていたのは、夫のキャラクターで、
その放蕩ぶりと無責任さには、呆れるばかり・・・
けれど、そこは、さすがの妻でした。
夫の道楽の寄席を、いっそ商売にしてしまえ!との
発想から、こんなに凄いサクセスストーリーが誕生
したのだから。
クライマックスは、なんといっても通天閣だ!!

彼女なら、寄席に限らず、どの時代のどんな商いでも
成功させるだろう、と思わせる類稀なる商才の持ち主で、
全ての行動が、未来を見越した計算に基づいているの
だから、驚きです。

誰もが認める天性の経営者ですが、商売に一生を捧げ、
止まることなく走り続けた人生は、幸せだったのでしょうか。

彼女が築き上げたものは、戦争で根こそぎ奪われて
しまったけど、残された者たちが、どうやって
再興を果たすのか、誰かこの続きを書いてくれないかな??