2020年2月6日木曜日

本のお話317 星宿海への道

宮本輝第17弾 星宿海への道

タイトルの星宿海は、中国の崑崙山脈の
東端に在る湖群の名称で、黄河の源流と
される場所です。

大小様々な形の湖が星の様に無数に点在し、
また湖面に映し出される空が星の様に輝く
ところから名付けられた星宿海。

作者がいかにこの湖沼群に心惹かれ、壮大な
ロマンを見出していたのかが、記述の端々に
伺えます。

異国の地で行方不明となった50歳の兄、雅人の安否を
気遣う義弟と一人の女性。
その2つの視点で語られる人間模様は、切なくも哀しくて。

雅人が最後まで執着し続けた星宿海・・・
そこから生まれたドラマは、新たなドラマを呼び、
それらは、不思議なご縁で繋がっていきます。
この物語は「もの悲しい」の一言に尽きますが、
哀愁の中に風景美の光る作品でした。

そしてこれも、ラストの一文に作者の特徴がとてもよく
表れていて、その独特の幕引きは、幾つかの作者作品を
思い出させます。