2020年8月26日水曜日

本のお話330 あの日のあなた

遠田潤子第6弾 あの日のあなた

通夜、葬式、初七日、四十九日、
一周忌・・・といった死者を弔う
一連の儀式は、身近な人の死を徐々
に受け入れ、前を向くのに必要な
プロセスであり、故人の為という
より残された者の為にある、との
一文が印象に残りました。
なるほどね。

これは、作者の初期作品と思いきや、
意外にも近年書かれたものでした。
初々しく思えたのは、前5作の様なドロドロした
息苦しさが無く、どこか表紙絵の様な少女漫画的
な爽やかさを感じるからかな。

これも複雑な家庭環境が背景にあるミステリーです。
予期せぬ出来事の積み重ねによって歪められた家族関係が
子に及ぼす影響は深刻で、これまでの様な明らさまな
虐待とはまた違った怖さを孕んでいます。

急死した父親の遺品から辿り着いた父の秘密。
憧れだった父親の過去が徐々に明かされていく中での
青年の葛藤と心の変化がつぶさに表現されています。

その幸せあっての不幸と、不幸が運んでくれた新たな出会い。
禍福はあざなえる縄の如しとは、よく言ったものだ。

これも、なかなか良かったです!