鳥肌が立つくらい心の琴線に触れた
と言っても過言でないほどの感動作
でした。
巻末解説から作者の自伝的要素が大いに
入っている事を知って、益々思い入れの
ある一冊となりました。
作者がかつて青年海外協力隊の一員
としてトンガに赴任していたなんて。
4編のヒロイン全員が訪れる南太平洋に
浮かぶトンガ王国は、彼女たちにとって特別な意味を
持つ場所で、其々が目的を果たす為にやって来て何かと
決別し生まれ変わる重要な舞台となっています。
図らずも前回載せた東北大震災を扱った希望荘に続き、
この物語は阪神大震災と深く関わっていましたが、
震災がよりリアルに身近で生生しく描かれています。
登場人物達が章を越えてどの様な繋がりを見せるのかが、
一番の読みどころです。
4篇中2篇は作者お得意の手法で、同じ出来事をこちら
側とあちら側、2つの視点で語っています。
作者の真骨頂は、読者を人間不信にさせるまでのドロドロ
した心理描写ですが、ここで繊細に描かれるヒロインの心の
機微が悲しくも切なく、けれども、やがてほのぼのとした
温かさで満たされていく、そんな作品でした。
ところで、巻末解説を担当した女優の中江有里さんと言えば☝
昔朝ドラで、当時まだ無名だった菅野美穂さんと一緒に重要な
役どころを演じていたのを覚えていますが、その初々しく
美しかった彼女の文才と言ったら・・・驚きです。
そうか、今や中江さんは、作家でもあるもんね!