読んでいるうちに、一見バラバラのお話
に見える短編全てが、ある人物を中心に
回っていることに気付きます。
それは、悪意は無いものの、無責任で
無節操で、感情の赴くままに流され通し
の人生を送り、周囲を翻弄した大学教授
です。
物語の中心に居ながら、肝腎の本人は
何も語らず、周囲の視点から人物像が浮かび
上がっていくところが、宮部みゆきの「火車」
を思い出させます。
6編中ダントツに良かったのは「予言」で、その章が
この作品のクオリティを押し上げている気がしました。
登場人物の繋がりを意識して読み返すと、幾つもの
発見があるので、これは、2度読みがお勧めです。
次は要所を押さえるだけの飛ばし読みで充分なので、
是非お試しあれ!
私の様な記憶力が低下して、読んだ端から登場人物の
名前も背景も忘れ去るおばさんはもちろんですが、誰もが、
へ~、これがその人で、あれはあの人だったのか、とか、
ここにそんな意味が込められていたとは、などなど、
新たな気付きが得られること、間違いなし!!
それにしても、三浦しをんさんには感心させられ通しだね。