村上春樹第5弾
色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年
このタイトルのセンスの良さが分かるはず。
珍しくファンタジー要素の無い作品でした。
私は断然こっち好みだね。
登場人物の複雑な心境を描きつつ、単純明快
なのが性に合う。
「ノルウェイの森」と重なるエピソードが
含まれるせいか、雰囲気も似ている気がします。
これまでの村上作品は全て、現実的、非現実的なものを
問わず、テーマの一つとして「死」を扱っていることに
今更ながら気付かされました。
主人公多崎つくるが帰省する度に集まってくれていた
地元の仲間たち。
かけがえのない宝物であり、心の拠り所だった彼らから
突然理由もわからず拒絶されたつくるの苦しみは、
何年にも渡って死を考え続けるほど耐え難いものでした。
16年のもの歳月を経て、つくるは絶縁された理由を探るべく
動き、衝撃の事実を知ることになるのです。
感慨深い作品でしたが、唯一気に入らないのが、読者の想像に
任せる形を取った結末です。
せめてもう一日だけ長く描いてくれてたら、すっきりしたのになあ。