2025年12月3日水曜日

本のお話392 教誨

柚月裕子第2弾 教誨

どんなお話か全く知らずに読み始めて
すぐ、何年か前に日本中を震撼させた
ある事件を題材にした作品だと気付き
ました。

事件に着想を得て作られたフィクション
なのか、ルポ的作品なのかはっきりしない
までも、作者が事件について綿密な取材を
重ねて書き上げたものに違いなく、
事実も多く含まれている様に感じました。

犯人の遠縁にあたる女性と地元の記者が辿り着いた真実とは?
メディアの報道によって作り上げられた犯人像とはまた違った
加害者の側面が徐々に浮かび上がります。

事件の背景や犯人の壮絶な生い立ちと彼女を取り巻く過酷な環境、
その土地の閉鎖的な風土等々、表に出ない事情の複雑さに
驚愕しました。

被害者やその家族にとっては犯人の事情など知ったことではなく、
幼い命が奪われて良い理由にならないのは大前提で、作者目線は
加害者に寄り添い過ぎている気がしなくはないけれど・・・
犯人の深い悲しみが伝わってくる、切なくやりきれないお話でした。