池井戸潤第6弾 鉄の骨
これも作者お得意の社会派経済小説で、
談合の中でも、特に公共工事を巡る
公務員絡みの官製談合を扱っています。
純粋に建物を創造する夢と情熱を持って
中堅ゼネコンに入社した若手社員が主人公
の物語です。
毎日やりがいを持って生き生きと建設現場
で働いていた富島平太は、入社3年にして本社の
談合課と称される部署に配属され、自らの意志とは
関係なく談合に関わらされていくのですが・・・
正義と現実の狭間で苦しむ主人公の心情が、職場の
人間関係や恋愛、更には家族愛に絡めて描かれています。
銀行が舞台の作者作品が、上司の部下や同僚に対するいじめや
責任転嫁、そして姑息な駆け引き満載であるのに対して、
課の同志たちの強い絆と仲間への思い遣りが、何とも温かく
感じられる作品でした。
そしてこれも、あっと驚くどんでん返しが見事です。
って、ノンフィクションだったね!!
他社との競合や談合の仕組み、犯罪と知りつつも談合せざるを
得ないゼネコンの事情や、談合を取りまとめるフィクサーの存在、
政治家とゼネコンの癒着や、マネーロンダリング等々盛り沢山で、
ゼネコンという未知の世界を、また一つ覗くことができた気分です。