池井戸潤第8弾 BT’63
BT’63は、表紙に描かれているボンネット
トラックの名称で、呪われたトラックと
呼ばれる程、幾つもの忌まわしい事件に
関わった貨物車です。
仕事上の過度なストレスから精神を病み、
職も妻も失った主人公が、タイムスリップして
出会ったのは、若かりし頃の父親でした。
父親の想像を絶する受難と、それに立ち向かう真摯な生き様を
目の当たりにする主人公は、やがてこのトラックに導かれた
本当の意味を知るのです。
蒲生邸事件や、嫌われ松子の一生を彷彿とさせる作品でした。
主人公が過去の世界に居る間、自身の実体は消えてなくなり、
同化した父親の目線と思考で全てを体感するというのは、
SF小説の中でも、初めて見るパターンでした。
これまで読んだ作者作品とは異色の現実離れしたお話でしたが、
作者お得意の社会派金融小説以上に面白く、電車に乗る時間が
楽しみで、最後は家で読んでしまったよ。
そう言えば、数年前にお父さんが見ていた作者原作の連ドラ「民王」。
今まで全く読む気が無かったけれど、これを機に読んでみようかな?
非現実的なお話って、意外に面白い。