2018年9月22日土曜日

本のお話285 空中庭園

角田光代 空中庭園

作者と言えば、「八日目の蝉」。
それは、数年前に見に行って、大きな
衝撃を受けた映画です。
中島美嘉さんのエンディングテーマも
涙を誘います。涙活映画と言えそう。

この空中庭園はと言うと・・・
団地に暮らす一見平凡な4人家族の家庭を、
家族それぞれと、この家族に関わる訳アリの若い女性、
そして母方の祖母の計6人の視点から描いた短編連作でした。

家族間で隠し事はせず、どんな事でもさらけ出していこうと
取り決めた母親の思いとは裏腹に、当の母親を含めた誰もが
秘密を抱えて暮らしています。
文中で、その様子を「身内の侵入を防いで固く閉ざされた
お揃いの5つのオートロックドア」と例えています。

一章進む毎に、一家の実像が浮かび上がっていくのが面白い。
深刻だけど、意外とどこにでも転がっていそうな家族の実態を
シニカルに描いた少々重みのあるお話でした。
良かったです!