梁石日 血と骨
作者の父をモデルにしたノンフィクション
で、凄まじい物語です。
今までに読んだ凄まじい物語は、激動の世
に生まれたが故の波乱万丈で、時代に翻弄
されながらも、懸命に生きた人々が、主人公でした。
ところが、この作品の主人公ときたら、とんでもなく
おぞましく、本当にこんな人間が居たのだろうか、デフォルメ
されてるんじゃないかと思うほど、残酷で非情な男です。
怪物然とした体格も雰囲気も、ビートたけしのイメージではないね。
民族問題と、彼らを取り巻く当時の過酷な社会を背景に、欲望の赴く
ままに生きる主人公金俊平と、彼に蹂躙される家族が描かれています。
貧困と暴力に苦しむ生活を強いられながらも、必死に生きた妻と子供
たちの報われなかった人生・・・
自業自得だ!ざま~みやがれ!!!と言わんばかりの結末ですが、
俊平に虐げられた妻や子供たちの薄幸な生涯と、奴の道連れとなった
(愛人に産ませた)幼子らを思うと、もやもやした後味の悪さが残ります。
それでも、テーマが重く深く、読み応えのある作品でした。