湊かなえ第17弾 ポイズンドーター・ホーリーマザー
6編から成る短編集で、表題のラスト2編は
繋がっており、ポイズンドーターは娘目線、
ホーリーマザーは、その母娘を知る2人の
女性の目線から描かれています。
殆どのストーリーに深く関わっているのが、
娘の人生に多大な影響を及ぼした個性的な
母親達です。
彼女らの娘への干渉や支配は異常に見えます
が、環境次第で誰もがそうなる可能性を
孕んでいる気がします。
この物語は、娘の苦しみを描きつつも、子への愛情から
行き過ぎた言動をしてしまう母親を一括りに毒親と呼ぶ
ことについて、大いなる疑問を投げかけています。
確かにそうかもしれない、と納得する反面、親の思いがどうであれ、
それじゃあ、子供はたまらないだろうと思わずにいられない。
ポイズンドーター・ホーリーマザーでは、テレビ、雑誌等
マスメディアで何かを暴露することの怖さについても言及
しています。
その破壊力たるや、登場人物達をいとも簡単に思いもよらぬ
方向に運んで行ってしまうほどです。
主人公が女優だから起こるレアな問題ではあるけれど、
昨今のSNS事情とも重なりそう。
視点が変わると、同じ出来事が全く違ったものになる意外性が
作者の真骨頂ですが、この作品でも存分に発揮されていました。
その点で、「罪深き女」が一番衝撃的だったかな。