2021年6月5日土曜日

本のお話346 深夜特急5~トルコ・ギリシャ・地中海篇

 沢木耕太郎 深夜特急5~
 トルコ・ギリシャ・地中海篇

特にこの巻は私好みの国々が舞台なので、
ワクワクしながら読み始めましたが、
誰もが期待する世界遺産等に全く興味が
ない作者に毎度の事ながら驚かされます。

けれども、そんな観光名所以外の風景が
思いの外素晴らしく、胸に迫るものが
ありました。
それは、其々の地でのエピソードに絡めて
描かれる作者の心情有っての感慨です。

道中あらゆる事に自問自答して導き出す答えがいつも
哲学的で、作者はやはり書く事を生業とする人なんだ
なあ、としみじみ・・・

そんな彼のバックパッカーやルポライターの原点は意外な
ところにありました。

思い付きと流れ任せの旅の中で、たった一つ担された重要な
役割と、子供の頃からいつか行きたいと願い続けた場所への訪問。

体力の衰えを思い知ることになるオリンピアでの出来事からは、
作者は明晰な頭脳だけでなく、卓越した運動神経も兼ね備えた人
である事が伺えます。
その様に神に2物も3物も与えられた作者ですが、彼の苦悩の
根源は、もしかしてそこにあるのかも、なんて思ったり・・・

物事を突き詰めて考える性質が、アテネのアクロポリスの丘を
訪れた際の感想にもよく表れています。