中世ヨーロッパが舞台のロマンス小説と、
その作品を翻訳中の主人公の日常が章毎
交互に描かれています。
お姫様と騎士の物語になかなか入り
込めず、遅々として進まなかったのが、
主人公あかねの毎日に視点を移してから
急に面白くなり、いつの間にか引き込ま
れていました。
そうなると、どうも興味が持てなかった
中世の物語まで釣られるように面白く
なるではありませんか。
翻訳は暴走を重ねた末、原作とかけ離れた物語が
出来上がってしまいますが、翻訳家のあかねが作り
出したストーリーの方が、ずっとロマンチックで刺激的です。
勝手に動き回る登場人物を追いかけるあかねは、
作家の才能も持ち合わせているらしい。
彼女は締め切りを思い出す度に軌道修正を図りますが、
いつの間にかまた脱線を繰り返し・・・
シリアスな物語と現実世界の落差がこの物語の最大の魅力です。
あかねの彼氏は人間味溢れる魅力的な男子ですが、
我が道を行く自由人は娘の親から見れば、心配この上ない相手です。
「星間商事社史編纂室」の幸代の彼氏、洋平と思い切り重なるね。