2026年1月23日金曜日

本のお話393 慈雨

柚木裕子第3弾 慈雨

この物語の冤罪は、偶然による不運と、
人権や人命より権威と立場を重んじる
警察組織の傲慢が重なって起こった
悲劇でした。

どんな証拠を突きつけられても過ちを
正さない上層部と、自身の無力さを嘆き、
良心の呵責に苛まれる刑事。

人として当たり前の感覚を持つ者ほど苦しむ皮肉な
世界に愕然としますが、それだけでは終わらないのが
小説の良いところです。

退職後、贖罪の意味を込めて、妻を伴い西国八十八ヵ所
巡りをする主人公の元刑事。
お遍路旅の最中に起こった事件と、彼の活躍が仲間や後輩
との電話でのやりとりを交えて描かれています。

人を捕まえ裁く立場にある者は、常に真実を追究する一人の
人間でなければならないと、彼の真摯な姿勢が語っている
かの様でした。

それぞれのお寺や道中の景色、旅先で出会った人達との
交流が旅情となって物語を彩ります。

そして特筆すべきは、主人公の奥さんの素晴らしさです。
黙って夫を支え、どんな時も信じて寄り添い続ける姿は、
まさしく妻の鑑だね。