北杜夫 楡家の人びと
祖父は政治家、父は歌人、兄も本人も文筆家
でありながら、いずれも精神科医という2足の
わらじを履く著名な作者一族がモデルという
ところに興味を引かれ、以前から読みたかった
作品でした。
脳病院を経営する楡家の親子3代に渡る壮大な
ノンフィクションで、叔父や叔母、従兄、家族同然の使用人
や書生、病院の職員や入院患者など、個性的な面々が物語を
一層盛り上げます。
面白さがどんどん加速していきますが、下巻の途中で雰囲気が
一変し、戦争一色の重苦しい展開となります。
「永遠の0」や「硫黄島からの手紙」を彷彿とさせるシーンの
連続でした。
楡家の特異性に激動の時代が絡んだ波乱万丈の物語で、
読み応え抜群です。
思った通りの名作でしたが、個人的にはシリアスな後半より、
コミカルな前半が好きかも・・・