2019年7月20日土曜日

本のお話301 約束の海

山崎豊子第9弾 約束の海

海上自衛隊の潜水艦乗りの青年の物語
ですが、残念ながら起承転結の、起に
当たる第一部を完結したところで作者が
亡くなり、未完の遺作となりました。

完成していたら、どんな結末を迎えたのか
気になるところですが、ここまででも、
一つの物語として成立しており、未知の
世界だった潜水艦乗組員の勤務や生活を
垣間見ることが出来ました。
よくぞ、第一部を書き上げて下さいました。

これも史実を基にしたフィクションですが、内容はさておき・・・

以前、引退した潜水艦を見学した際に、外界と遮断され、
唯一のプライベート空間であるベッドは、座る高さも寝返り
を打つスペースもなく、閉塞感と圧迫感この上ない艦での
長期間に渡る勤務は、さぞかし辛いだろうなあ・・・
と思った記憶が蘇ります。

けれど!!実情は、もっと大変なことが満載です。
それでも、彼らは一様に潜水艦に強く惹かれ、壮大な夢とロマンを
見出してその道を選び、厳しい訓練を潜り抜けてきたのです。

更に国家機密の極秘任務を担う重責を思えば、潜水艦乗りは、
自衛隊きってのエリート中のエリートと言われるのも頷けます。

巻末に、長きに渡り作者と行動を共にしてこられた秘書の方の
言葉や、病気のため、これまでの様に自ら取材に出向けない作者に
協力する目的で組まれたプロジェクトチームによる貴重な資料が
載っています。これがまた興味深い。

それらを含め、山崎ファンにはぜひ読んでもらいたい一冊です。