山崎豊子第9弾 約束の海
海上自衛隊の潜水艦乗りの青年の物語
ですが、残念ながら起承転結の、起に
当たる第一部を完結したところで作者が
亡くなり、未完の遺作となりました。
完成していたら、どんな結末を迎えたのか
気になるところですが、ここまででも、
一つの物語として成立しており、未知の
世界だった潜水艦乗組員の勤務や生活を
垣間見ることが出来ました。
よくぞ、第一部を書き上げて下さいました。
これも史実を基にしたフィクションですが、内容はさておき・・・
以前、引退した潜水艦を見学した際に、外界と遮断され、
唯一のプライベート空間であるベッドは、座る高さも寝返り
を打つスペースもなく、閉塞感と圧迫感この上ない艦での
長期間に渡る勤務は、さぞかし辛いだろうなあ・・・
と思った記憶が蘇ります。
けれど!!実情は、もっと大変なことが満載です。
それでも、彼らは一様に潜水艦に強く惹かれ、壮大な夢とロマンを
見出してその道を選び、厳しい訓練を潜り抜けてきたのです。
更に国家機密の極秘任務を担う重責を思えば、潜水艦乗りは、
自衛隊きってのエリート中のエリートと言われるのも頷けます。
巻末に、長きに渡り作者と行動を共にしてこられた秘書の方の
言葉や、病気のため、これまでの様に自ら取材に出向けない作者に
協力する目的で組まれたプロジェクトチームによる貴重な資料が
載っています。これがまた興味深い。
それらを含め、山崎ファンにはぜひ読んでもらいたい一冊です。