2021年5月8日土曜日

本のお話343 深夜特急3~インド・ネパール篇

沢木耕太郎 深夜特急3
~インド・ネパール篇

前巻のマレーシアとシンガポールには
何の魅力も感じなかった作者でしたが、
この旅では、香港の様な高揚感と興奮
が味わえたとしています。
むしろそれ以上かも。

日本では一生かかっても遭遇出来ない
凄まじい光景を目の当たりにするなど、
作者は世界を俯瞰し、原点に立ち返って
自身を見つめ直す機会が与えられる場所に
強く惹かれる様です。
観光旅行では決して得られない体験と悟りの数々・・・

作者は文中で「香港には光と影があるが、香港で影と
見えていたものが、カルカッタでは、まばゆい光だった」
と述べるくらい、ここで描かれたインドの全てが衝撃的でした。

作者の目を通したカルカッタやブッダガヤやベナレス、
そしてカトマンズの風景や人々の暮らしが、まるで
自分の目で見ているかの様に広がり展開していきます。
それがこの作品の大きな魅力で、旅から10年も経過して
書かれたものなのに、色褪せない臨場感があります。

巻末のブッダガヤで知り合った一人の教師との対談の中で、
作者はインドの過酷な旅の経験によって、東京でなら、
どんな事をしても生きていけるという自信が得られ、
その気付きこそが収穫だったと語っていました。
うん、分かる気がする・・・