辻村深月第13弾 スロウハイツの神様
上下巻の長編で、読み応えがありました。
作者の作品には読む順序が有るらしく、
「凍りのくじら」の次とされるこの物語には
ちょこっとだけ、先の主人公が登場します。
文中でも例えられるように、かつて日本を代表する漫画家
たちが住んだことで知られる木造アパート「トキワ荘」を
思わせる集合住宅(スローハイツ)が舞台の物語です。
そのオーナーは今をときめく売れっ子脚本家で、住人は
作家、漫画家、画家などのクリエイターたち。
超有名人も居れば、後に成功を掴む者や掴みつつある者、
未だ夢追い途中の人も居て、彼ら彼女らの人間関係や
過去が、それぞれの思いや葛藤と共に描かれています。
作家だからこそ書ける業界話も興味深い。
特筆すべきは、何と言っても伏線回収の見事さです。
あちこちに散りばめられた幾つものエピソードが終盤で
次々と繋がっていく爽快感が堪らない。
そして、意外にも!
これは、ハッピーエンドのラブストーリーでした。
こんなにも壮大な物語だったとは・・・驚きです。