2024年10月29日火曜日

本のお話380 地面師たち

新庄耕 地面師たち

これは、2017年に起こった積水ハウス巨額欺事件に着想を得て
創作されたフィクションです。

映画監督である大根仁氏の巻末解説によると・・・
事件に興味を持ち、誰かが目を付ける前に自身の手で映像化したい
と熱望する中で監督が出会ったのがこの作品でした。

意外なことに、企画書を映画やドラマのプロデューサーに持ち込むも、
判で押したように「めちゃくちゃ面白いけど、この企画は絶対に通らない、
映像化は無理」と返されるばかり。

大手映画会社はどこも系列に不動産部門を持ち、テレビも全局然りで
CMが主たる収入源である以上、スポンサーに配慮しなくてはならない
からでした。 

それで、ネット配信ドラマなんだ。なるほどね。
ドラマが大ヒットしたのが頷ける程、原作は面白かった!

主人公が見舞われた災難には大いに同情するものの、だからと言って、
自らの意思で重ねた犯行に共感できるところは一つも無く・・・

地面師達の並外れた行動力と度胸、明晰な頭脳、目的を遂げるための
手間や努力をどうしてもっと意義あることに使えないのだろう・・・

騙される側の事情や焦る気持ちが冷静な判断を鈍らせていく様子も
興味深く描かれています。

物語の巧妙な手口と比べて実際の事件は随分稚拙で杜撰だったそうですが、
今後、件の詐欺事件を扱ったノンフィクションが出ることがあれば、
その辺りを意識しながら、是非読み比べてみたいものです。
2重表紙になってるよ。