松本清張第9弾 状況曲線
建設業界の闇を描いたサスペンスで、談合
組織と高級官僚と両者の橋渡しをする大物の
媒介人が絡んだ3つの殺人事件のトリックを
地方の刑事が、解き明かしていきます。
業界の暗黙の慣例や、談合の謎の世話人が、
官庁や政治家に幅広い人脈を持ち、建設業界
で大きな力を持つに至ったゆえんなど、
興味深いお話が、盛り沢山です。
これも、ため息の出そうな緻密な取材の上に成り立つ
物語で、面白くて引き込まれましたが、読んだ後、
どうも釈然としない感が残ります。
ここから、ちょっとネタバレですが・・・・
最も不自然なのは、登場人物が揃ってあまりにも安易に
殺人や偽装工作に加担するところです。
ミステリーには、そんな人の1人や2人居るものですが、
皆が皆なとなると、ちょっと・・・
かなりの社会的地位にある者を含む誰もが、利害が一致さえ
すれば、躊躇なく持ちかけられた話に乗ってしまうのです。
伏線の張り方や読者を欺く技法について、流石だなあと思う反面、
こじつけっぽくて、現実味に欠ける印象を受けました。
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