湊かなえ第8弾 母性
読者を欺く点においても、非常によく出来た
お話で、他を押しのけ、湊作品の2~3位に
(my)ランキングされました。
揃いも揃って悪質な旦那の家族はさて置き、
最も理解に苦しむのは、嫁である母親の
気持ちです。
同居する旦那の家族連中に心身共にボロボロ
になるまでこき使わても、尽くし続ける一方で、
唯一自分の身を案じてくれる娘への要求の高さと、
冷たさがどうにも受け入れがたく・・・
娘に対する冷淡さとは対照に、実母(娘の祖母)への
強い依存と愛着は、鬼気迫るものがあります。
その理解しにくい屈折した心理こそが、湊かなえワールドで、
視点によって、同じ物事が全く違うものになる意外性と共に、
読者を引き込む源かもしれません。
母と娘の独白の合間に、1人の女性高校教師の独白が、ちょこっと
おまけの様に挟み込まれています。それがこのお話にどう関係
しているのか、終章で明らかになり・・・・あっ!と驚く結末です。
ドロドロした暗い物語も、終わり方次第で、心地よいお話に変身する
ものですね。終わりよければ、全て良しか。