2015年11月18日水曜日

本のお話234 火の路

松本清張第17弾 火の路

電車の中でしか読まなかったとは言え、

読み終えるのに、こんなに日にちの
かかった本は珍しい。

学術論文を含め、古代史の専門的な記述

大半を占める異色のミステリーです。

作者がいかに古代の謎に魅せられ、遺跡や

遺物に壮大なロマンを見出していたのかが
伺える一作で、作者の新たな側面を知った思いです。

小難しく少々面倒で(時に飛ばし読みもしつつ)、
遅々として読み進めなかった割にインパクトの強い
作品で、家に残しておきたいの一つとなりました。

簡単に言うと、大学で史学科助手を務める女性主人公が、

飛鳥に散在する石造物の謎を追い、奈良の明日香村や
古墳群、果てはイランの地に赴き、調査考察の上、
論文を重ねて発表するというお話です。

なので、主人公には、れっきとしたモデルが居たに違い

ないと思いきや!!巻末解説から、通子がうち立てた
学説や辿った足取りは、作者のもの言えそうです。

ミステリーながら、テーマの中心はどこまでも古代史で、

隙間に人間模様が上手く織り込まれている感じです。

通子が出会った人達との交流を通して、学界の偏狭な

世界が垣間見えます

最後に全てが解き明かされる作者の多くの作品と違って、

犯人や犯行動機について、一人の登場人物の憶測の域を
出ない結末にひっかかるものを感じつつも、やっぱり
これは、読者に畏敬の念を抱かせるほどの大作でした。
にほんブログ村 本ブログ 小説へ
にほんブログ村