三浦綾子 「果て遠き丘」
つい先日読み終えたばかりです。
電車の中で半分程読んだら入り込んでしまい、
残りは家で一気に読みました。
誰に対しても愛する気持ちを持たず、常に人を妬み
羨み、人を陥れたり人の大切にしているものを奪い、
心無い言葉で人を傷つける事にしか、喜びや幸せを
見出すことができない香也子という女性が主人公の
物語です。
香也子の卑劣さは度を越していますが、どの企みも
稚拙で、みんなを不幸のどん底に陥れたいと願う
香也子の目論見は外れ、悪事は全て香也子自身に
跳ね返る結末に、胸のすく思いがしました。
必ずしも勧善懲悪にならない彼女の作風を思えば、
これは納得のいく作品です。
自分の周りに決して居て欲しくない人ですが、ただ腹が立つというよりも、
幸せになれるはずのない香也子という人間がとても哀れで、可哀想に
感じられました。