2014年8月17日日曜日

本のお話141 伊豆の踊子

川端康成 伊豆の踊子

次郎物語や野菊の墓と同じジュニア版文学

で、これは8作から成る短編集です。
シリーズはどれも巻末の解説に、作者の
生い立ちや当時の社会情勢が記されている
ので、作品の背景知ることが出来、物語
理解を深めるのに役立ちます。

幼少期に祖父以外の全ての肉親を
喪った作者は、
寂しさの中で少年時代を送ります。
僅か16歳で唯一の肉親である祖父を介護の末に
看取った後は、天涯孤独の身となったそうです。
川端文学の原型はその孤児性、孤独性にあると
書かれていました。

この作品は作者の自伝的小説となっています。
高校生(今の大学生)の「私(作者)」が伊豆への一人旅の途中に、
踊子たち一行と出会い、数日間行動を共にし、また別れていくという物語です。
鬱屈した思いを抱えて悩み、旅に出た主人公は、踊子との出会いによって、
もやもやした苦しみを別れの涙と共に洗い流し、人生で大切な何かを得るのです。

巻頭の伊豆の踊子は30ページ足らずの短編ですが、しみじみとした情感が
胸を打つ深い物語でした。やっぱり純文学はいい!!