2014年6月27日金曜日

本のお話126 慈雨の音

宮本輝NO.7 自伝第6弾「慈雨の音」

熊吾は、開業に奔走し運営を軌道に乗せ
モータープールの管理を期限付きで持ち主から
任されていますが、後半はそれと並行して、
中古車ブローカーの事務所を構え、事業の再起に
乗り出します。

病弱だった伸仁が様々な出来事を経験して思春期を
迎え、心身共に逞しく成長する姿や、所縁の有る
人達との幾つもの別れや死別が描かれています。

前々巻「天の夜曲」の巻末に、作者と俳優の児玉清
さんの対談が載っています。その中で作者は、
父は才覚や機転、先見の明から、誰より早く8合目
まで登ってしまうけれど、登りきるための更なる頑張り時になると、
急にそれまでのやり方を変えたり、より高みを目指して失敗し、
下まで転がり落ちるのが常だった、語っています。
そして、松坂家のモデルは父であり母であり自分だけど、描くうちに、
それぞれが別の人間になっていったとも書かれていました。

実際の父親は、晩年落ちぶれて失意の中で亡くなったそうですが、
この物語は、是非ハッピーエンドにしてもらいたいものです。