宮尾登美子 「春燈」
櫂の続きのお話で、ここから綾子が主役になります。
春燈の前半は、櫂と話が重複しています。
綾子が岩伍の元に戻るまでの喜和との2人暮らし、
岩伍の後妻や連れ子たちとの生活や受験、リーダー
シップを発揮する型破りな学校生活と友情、その後
の代用教員生活などが描かれています。
無くてはならない存在として強く依存し合っていた
喜和と綾子は、この春燈で自然に親離れ、子離れを
果たします。
年を取るにつれ、岩伍の強烈な存在感と横暴さが、
徐々に薄れていく感があります。
喜和が岩伍の生業を受け入れられなかった事が夫婦不和の大きな
原因だったとしても、岩伍が血気盛んだった時期に連れ添い、
苦労を強いられ続けた挙句に放り出された喜和が不憫でした。
多感な娘時代は、綾子が最も家業について悩む時期ですが、
その家業が後の大作家、宮尾登美子を作ることになるのですね。