2014年5月10日土曜日

本のお話112 櫂

宮尾登美子 「櫂」

実家が娼妓の紹介業を営んだことから、その世界で働く薄幸な女性を
描いた作品を数多く世に送り出した宮尾登美子さんの自伝小説第一弾です。

横暴な父親岩伍と、病床につく長男を介抱しながら次男の素行に悩みつつ
夫が女義太夫に産ませた長女綾子をわが子以上に慈しみ育てる母親の喜和
の二人がこの物語の中心となっています。

夫が他の女に産ませた子供など到底育てられないと主張した喜和の気持ち
がどんな風に変わり、なさぬ仲の娘に
どの様に愛情を注いで育てたのかが
興味深く描かれています。
夫にひたすら仕え、どんな理不尽な目に遭おうとも耐え忍ばなくては
ならなかったこの時代の女性は大変だったんだなあ・・と思います。

幼いながらも喜和の苦労を肌で感じ、傍若無人な岩伍から喜和を守ろう
とする綾子の強さは、ある意味、父親譲りなのかもしれません。
この少女綾子が宮尾登美子さんですが、なかなか頼もしいお嬢さんです。

家にある筈の櫂が何故か見当たらず・・・・見つかり次第アップします。