2014年5月16日金曜日

本のお話114 朱夏

宮尾登美子 朱夏

朱夏は宮尾登美子自伝の第3弾にあたります。

開拓団の子弟教育の為に、志を同じくする
仲間と共に満州に赴任した夫を追いかけ、
綾子は乳飲み子の娘を連れて満州に渡るの
ですが・・・・
満州での素朴で平和だった生活や、敗戦から
命からがら日本に引き揚げるまでの死と隣合わせ
の生活描いた過酷で波乱に満ちた物語でした。

主人の仲間の教師やその妻たちとの人間関係や、極限状態の
中でこそ見えてくる人間の本質、本性にも迫っています。

帰還して、仁淀川の清く流れる豊かな水流を見た時の綾子の安堵と
感慨は一入で、読み手にも伝わってくるかの様でした。

忌まわしい家業と呪いながらも裕福な家の娘として、わがままいっぱいに
育った綾子の想像もしなかった試練の日々が、生々しいシーンを伴って
描かれています。背景の幾つかの共通点から「赤い月」を思い出しました。