宮尾登美子 仁淀川
宮尾登美子の自伝長編小説は、この仁淀川で完結します。
親子3人で満州から引き揚げた綾子の馴染めなかった
嫁ぎ先農家での暮らしや、価値観の違う働き者の姑
との確執、両親との死別、そして踏み出そうとする
新たな一歩が描かれています。
娼妓の紹介業を営んできたことは、人として正しかった
のか?と晩年、岩伍が自らに問い懊悩し続けたことと、
嫌悪感を抱き続けた父でも、その死は、亡骸にすがり
滂沱と涙を流すほどの深い悲しみを綾子にもたらした
ことが、この物語で強く印象に残った部分です。
同時に、父の死により自分を長年縛り付けていた縄が
解けていく開放感を実感した綾子の表裏一体の感情には、
妙に納得できるものがありました。
非常に読み応えのある物語で、お勧め度、星5つ!!★★★★★