2014年5月2日金曜日

本のお話110 神への告発

箙田鶴子 神への告発

これは、友達が感銘を受けた自伝小説です。

あまりにも残酷で苦しかった自身の人生に対して、
「もし神が存在するなら、神へ告発状を叩きつけたい」
との思いから、このタイトルは付けられています。

由緒ある家に生まれた箙田鶴子さんは、脳性麻痺に
よる重度の身体障害のため、父の死後、身内の者から
酷い虐待を受け続けます。
母親と姉の非情さや、義兄や使用人からまでも受けた
身体的、心理的虐待の酷さに言葉を失います。

その後作者が10年もの歳月を過ごしたのは、
人間くずかごと呼ぶに相応しい姨捨山さながらの施設
で、そこを出た後も、更に過酷な暮らしは続きます。

絶望の中で信じられる人に出会えたと思っても、
悉く裏切られる辛いお話でした。

そんな環境に置かれながら、身に付けた作者の知識や教養の高さ、同じ施設の
知的障害や精神を病む仲間たちを心配し配慮する懐の深さ、そして唯一動く左足
の指を駆使してタイプを打ち、絵を描き、家事をこなす頑張りに、凡人離れ
したものを感じます。

何度も自殺を図る程苦しかった生活の中で、意地とプライドを持ち、生きる
ために血の滲むような努力を続けた田鶴子さんを少しでも見習わなくては、
怠け者私は思うのでした。