2014年7月13日日曜日

本のお話131 異国の窓から

宮本輝No.12 異国の窓から

「ドナウの旅人」を新聞連載するにあたって、関係者や友人
を伴い、
作者は取材の為に1か月間、東欧諸国を巡ります。
これは、30年以上前に書かれたその取材旅行記です。

一行はドナウ川に沿って旅しますが、当時まだ共産国だった国々への

訪問はとても困難なもので、アクシデントの連続でした。
作者が持病を抱えて長旅することにも、不安が付き纏います。

トラブルや諍いを経て深まった仲間との絆、異国の地で出会った人達のこと、
先々でのエピソードが、時にシリアスに、時に面白おかしく綴られています。
大阪弁の作者はイメージと違って、ひょうきんで気さくで面白い!
意外と冷静でないところにも親近感を感じます。

旅先での出会いや些細な出来事、垣間見た景色の他、
知らない街のごみ箱
の中身やパンなど取るに足らないものから、突如として情景が浮かび上がり、
霧が立ち込めるようにしてあらすじできるのだそうです。
松本清張さんも生前同じ様な事をテレビで話しておられましたが、
それこそが才能ですね。

大胆にも作者は、この旅で初めて出会ったハンガリーの青年を日本に招き

自分の家にホームステイさせて、青年の3年間の留学生活を支えるのですが、
その貴重な経験は、後の彗星物語誕生に繋がります。

そんな風に宮本作品の多くは、自身の経験がモチーフになっている様です。