2014年7月16日水曜日

本のお話132 錦繍

宮本輝No.13 「錦繍」


多くを手放してしまいましたが、作者の初期の作品
は、かなり読んだと思います。
そのきっかけとなったのが、友達が何気なくくれた
この一冊で、独特の風情を物語の中に感じました。

蔵王のゴンドラリフトでの束の間の再会をきっかけ

に、別れた夫婦が10か月間に渡って手紙のやり
取りをするのですが、これはその往復書簡から成り
立つそこはかとなく切ない物語です。

阪神香櫨園駅近くの川沿いの並木道を歩いたことあります。
ここが錦繍舞台となった街なんだなあ、周りの景色を
眺めながら青葉の木陰歩いたのは、確か18年前・・・
そう言えば、「青が散る」もこの辺りのお話でした。

エッセイ中で作者は、昔罹った結核や、20代から
苦しんできた
不安神経症(パニック障害)について語っています。
大病を患ったことや、パニック発作で味わう死の恐怖がもたらした
死生観の様なものが、彼の描く作風と深くつながっている気がします。