2013年5月19日日曜日

本のお話34 天北原野

三浦綾子第9弾は天北原野

三浦綾子作品中のmyランキング、堂々の1位です
読み終えた後「良かった!」と思ったのとは少し違って・・・
何とも言えない虚しさと寂しさが、心の中を秋風のように吹き
抜けて、しばらく余韻に浸ってしまう様な、そんな物語でした。
これはテンボク原野ではなく、テンポク原野と読みます。
北海道の最北部と樺太を舞台にした切ない物語です。

この人の作品には、とんでもない悪人と有りえない善人が登場
する事が多いこの間書きましたが、中でも天北原野には最も
許せない悪人が登場します。
極悪非道な息子とそれに負けず劣らずの非情な父親、その悪人
親子によって引き裂かれた男女の物語ですが、引き裂かれても
尚、変わらずに心の奥底でお互いを思う気持ちが、また他の人
を傷つけて行く悲しいお話でした。

あの時あの人がこうしていればもっと違う展開になった筈なの
に、とか、どうしてこうしなかったのだろう、等と読んでいて
もどかしい思いをしたのを覚えています。
 
大正時代末から昭和の戦争を跨いだ激動の時代の物語で、敗戦
前後のソ連樺太侵攻による住民の北海道への引き揚げや、引き
揚げ船の魚雷撃沈事件など、歴史的事件をストーリーに絡めた
波乱万丈この上ない物語でした。
その波乱万丈こそが、読む人を引き付けるのですね。

まさこ評価で★が5つ、素晴らしい出来!★★★★★